| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(口頭発表) C02-10 (Oral presentation)
外来種は生態系を改変し、生物多様性を損なうため、効果的な管理が求められる。特に予防的対策が重要とされ、種分布モデル(SDM)を用いた分布予測が進められている。本研究では、国内外来魚であるオヤニラミCoreoperca kawamebariを対象に、生息適地モデルを構築し、環境要因の分析や侵入リスクの評価を行った。
文献情報をもとにオヤニラミの分布データを収集し、兵庫県92地点、滋賀県21地点の計113地点を取得した。環境要因として標高、傾斜度、年間降水量、年間平均気温、土地利用データを用い、主成分分析(PCA)により在来地域と外来地域のニッチの変化を評価した。また、MaxEntを用いて生息適地モデルを作成し、在来モデル、外来モデル、全域モデルの比較を行い、滋賀県の侵入段階を4分類(安定した地域、外来モデルのみで確認された地域、全域モデルのみで確認された地域、適応外の地域)に分けた。
結果として、オヤニラミは外来地域(滋賀県)に適応する過程で、より高い傾斜度、降水量、気温を選択し、多様な土地利用環境に適応していた。ニッチの重複は43%であり、2地域間のニッチ類似性は低かった。生息適地モデルでは、在来モデルと全域モデルでは年間平均気温が重要な要因であり、外来モデルでは年間降水量が最も影響を与えた。安定した生息域は滋賀県の既存の侵入河川流域に集中し、大津市南東部や栗東市、湖南市などが該当した。一方、長浜市や米原市など分布記録のない地域でも定着の可能性が高く、滋賀県の分布記録が北上していることから、今後さらなる侵入が予想される。
今後は、生息の可能性が高い地域での分布調査を行い、モデルの有効性について実証や、近年分布が拡大している東京都や愛知県など、他の外来地域におけるモデルの適用についても検討が必要である。