| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(口頭発表) C02-12 (Oral presentation)
農地環境は、栽培する作物(作目)によって大きく異なり、それに伴い出現する草本(雑草)も大きく変化する。国内ではこれまでに、作目ごとの出現種や有害種の報告やリスト化がなされてきた。しかし、どのような種特性がそれぞれの作目への定着・有害化に影響をもたらすのか、定量的な分析に基づく体系的理解はなされてはこなかった。そこで本研究では、侵入生態学的視点を導入し、「種の侵略性」と「作目の侵入されやすさ」の関係性を分析することで、国内の農地雑草の定着・有害化の仕組みを明らかにすることを目的とした。まず、文献情報を基に在来・外来合わせて約600種を農地雑草として定義し、各種について特性・原産情報を収集した。そのうち約300種について、6つの作目(イネ・ムギ・ダイズ・飼料トウモロコシ・サトウキビ・テンサイ)における出現の有無及び各作目における害の有無を整理した。それぞれの作目において①定着可能性を高める種特性は何か(環境フィルター、導入圧の効果を想定)②定着できた場合、有害化(作物生長に負の影響を与える)する可能性を高める種特性は何か(競争の効果を想定)を解析した。結果、定着と有害化に重要となる種特性は作目ごとに異なり、また定着で重要となる種特性が有害化でも重要となるとは限らないことが示された。中でも出芽時期は複数の作目において定着に重要であることが示唆されたが、一方で他の特性と比較し情報量が少ないという現状の課題が示された。また、出現する外来種の割合や原産地は作目ごとに大きく異なり、外来種管理を作物別にとらえる重要性が示唆された。これらの結果は、国内の農地雑草の体系的理解とそれに基づくリスク評価・管理提案への貢献が期待できると同時に、現状の予測研究における課題について指摘するものである。