| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) C02-15  (Oral presentation)

管理様式が異なる落葉二次林での落葉低木3種の開花結実量の違い
Differences in flowering and fruiting amount of three shrub species in deciduous secondary forests with different management types

*森本ななみ, 吉川正人(東京農工大学)
*Nanami MORIMOTO, Masato YOSHIKAWA(Tokyo Univ. of Agr. & Tech.)

 雑木林の管理放棄による林床の光量の低下は,草本種の減少だけでなく,低木性樹種の開花・結実にも影響を与えている可能性がある.本報告では,東京都府中市のコナラ二次林において,ガマズミ,カマツカ,ムラサキシキブの3種を対象に,光環境による個体レベルの着花率(花序数/花序のつきうる箇所数),花序レベルの花数と結実数および結実率(成熟果数/花数)の違いを明らかにした.
 林床管理の有無と林冠ギャップの有無により,調査地を皆伐区(C),林床管理区(M),放置区(A),林床管理区ギャップ(MG),放置区ギャップ(AG)に区分し,区域間での比較を行った.着花率は3種ともMGで最も高く,AまたはMで最も低かった.着花率に対しては根元直径と光環境が正の影響を与えており,特にAGやMGで成長に伴う着花率の上昇が大きかった.結実率は,カマツカはギャップ(0.30以上)で高く,光環境の好転に伴って結実率が上昇していた.ムラサキシキブは結実率がMG(0.28)のみで突出して高くC(0.02)で非常に低かったため,林冠が開けており,かつ低木が疎で側方からの光も得やすい環境で結実率が上昇すると考えられた.一方,ガマズミは林冠の閉鎖したM(0.38)で最も結実率が高く,光環境の良好さが結実率の上昇に繋がっていなかった.花序あたりの花数と結実率は,AGのガマズミで正の相関を示したが,区域ごとのばらつきが大きく,花序サイズが常に結実率に影響するとはいえなかった.
 以上から,林床管理やギャップ形成による光環境の好転は,3種いずれでも着花率の増加には寄与することがわかった.しかし,結実率の上昇にはムラサキシキブとカマツカでは寄与するものの,ガマズミでは寄与が明らかでなかった.着花率が高くなっても結実率が上昇しない原因としては,訪花昆虫の不足など光環境以外の要因が関係している可能性が考えられた.


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