| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) C02-20  (Oral presentation)

海鳥の餌種のスイッチは海洋気候レジームシフトと一致する
Switch of diet of a seabird species matched with the ocean climate regime shifts

*綿貫豊(北海道大学), 大門純平(名古屋大学), 伊藤元裕(東洋大学), 風間健太郎(早稲田大学), Jean Baptiste THIEBOT(Hokkaido University)
*Yutaka WATANUKI(Hokkaido University), Jumpei OKADO(Nagoya University), Motohiro ITO(Toyo University), Kentaro KAZAMA(Waseda University), Jean Baptiste THIEBOT(Hokkaido University)

海洋生態系の高次捕食者である海鳥の餌サンプリングは容易であり、これを長期モニタリングすることで気候変動がもたらす食物連鎖の変化を捉えられるかもしれない.潜水性海鳥のウトウは外洋の食物連鎖のカギ種である糧秣魚類をとらえ,くちばしにくわえて巣に戻り雛に与える.北海道日本海の天売島でこのウトウの餌を40年間調査したところ,1987年~1992年,1997/1998年,2013/2014年に餌構成の大きな変化が見られ、これらはこの期間に報告された3回の気候レジームシフトのタイミングと一致した.さらに餌種のスイッチは2021年~2023年にも,北海道周辺海域の他の4つの繁殖地もふくめ,ほぼ同時に観察され,これはまだ報告されていない糧秣魚類相の変化を示すのではないかと考えられた.また、ウトウの雛の成長を促進するカタクチイワシの餌中の重量比はその資源量の年変化を反映しており,好適な餌種の重量比はその資源量の指標となることもわかった.本研究は,ウトウがくわえてくる魚種をモニタリングすることで海洋生態系のカギ種の変化を即時的に知ることができることを示す.


日本生態学会