| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) C02-22  (Oral presentation)

総個体数と問題個体数に基づくヒグマ管理モデル【B】
An Adaptive Management Model in Hokkaido: for Brown Bears Based on Total Population and Number of Nuisance Bears【B】

*松田裕之(横浜国立大学), 槙朗(無所属), 間野勉(北海道立総合研究機構), 釣賀一二三(北海道立総合研究機構), 日野貴文(北海道立総合研究機構), Marko JUSUP(Fisheries Research Agency), 堀野眞一(無所属)
*Hiroyuki MATSUDA(Yokohama), Akira MAKI(Independent Researcher), Tsutomu MANO(Hokkaido Research Organization), Hifumi TSURUGA(Hokkaido Research Organization), Takafumi HINO(Hokkaido Research Organization), Marko JUSUP(Fisheries Research Agency), Shinichi HORINO(Independent Researcher)

北海道のヒグマの個体数は、一部が依然として絶滅危惧種に指定されているものの、おそらく完全に回復している。しかし、この回復は、人身事故や農業被害など、人間との衝突の増加につながっている。これらの問題が深刻化しているにもかかわらず、現在、誤差の少ない年間個体数推定値を提供するための具体的なゾーニングやモニタリングシステムは存在せず、効果的な管理政策の実現可能性について懸念が生じている。本稿では、個体数と害獣クマの数の両方の変化を考慮するアプローチに基づいて、具体的なゾーニングと個体数管理戦略を検討する。個体群動態モデルを用いて、絶滅リスクと人間と野生動物の衝突の尺度となるクマの総生息数や害獣クマの数などの指標を使用して、これらの管理戦略の有効性を比較する。さらに、個体数の定性的な傾向に基づいて、管理政策が5年ごとに改訂され、中間改訂が行われる場合と行われない場合のシナリオを検討する。我々の研究結果によると、市街地周辺の緩衝地帯は、その幅に関わらず保護地域と重なるが、30 km の緩衝地帯でも保護地域の 24.5% が緩衝地帯の外側に残る。また、個体数の推定がまれかつ不正確で、クマの総数と害獣の数がともに多い現状では、個体数調整を実施せずに衝突を緩和することは難しいことが示唆された。しかし、個体数の質的変化に応じて管理措置の期中改定を行うことで、クマの総個体数と害獣の数の両方を考慮した管理アプローチによって害獣の個体数を低く維持し、絶滅を防ぐことができることが示唆された。


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