| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(口頭発表) D01-06 (Oral presentation)
住宅地には多くの小規模な都市公園(街区公園,近隣公園)が散在し,都市緑地において一定の割合を占めているが,これまで生物多様性保全の観点からは重視されてこなかった.本研究では,これら小規模都市公園を対象として,周辺景観の都市化度および公園内の環境要因が地表性節足動物(ゴミムシ類,クモ類,アリ類)の種多様性および形質多様性に及ぼす影響を分析した.その結果,(1)4回の調査により,ゴミムシ類64種,クモ類70種,アリ類23種が確認された.これらの生物相は乾燥したオープンな環境に棲む生息場所ジェネラリストによって構成された.クモ類には環境省RDB準絶滅危惧種に該当する2種(ワスレナグモ,キシノウエトタテグモ)が含まれた.これらより,小規模公園は都市環境における生物の生息環境として一定の機能を果たしており,都市計画において無視できないことが示唆された.(2) 周辺の都市化度が高い公園ほど,ゴミムシ類の種数や個体数が減少する傾向が認められた.したがって,都市化の進んだ地域ほど,緑地の維持・創設による生息場所ネットワークの強化が重要と考えられた.(3) 都市化の高い景観における群集は,クモ類では小型で,造網性の,分散力の高い種が,ゴミムシ類では非捕食性種が優占する傾向が認められた.一方,都市化がアリの種および形質多様性に及ぼす影響は検出されなかった.(4) 公園内の環境については,落葉落枝リターの量(アリ類),土壌湿度(ゴミムシ類,クモ類),公園周縁部の舗装率(クモ類)などが多様性に影響を及ぼしていた.定期的な草刈り等により開けた環境を維持すること,落ち葉などを(部分的にでも)残すこと,公園周縁部の舗装率を可能な範囲で下げることなどが節足動物類の多様性を保全するうえで重要と考えられた.