| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) D03-01  (Oral presentation)

GPS追跡位置から予測した野外放鳥コウノトリの日本全国出現確率予測マップ
Predicted distribution map for Oriental Storks (Ciconia boyciana) in Japan using GPS transmitter datasets

*山田由美(兵庫県立大学), 田和康太(国立環境研究所, 兵庫県立大学), 長谷川雅美(山階鳥類研究所, 東邦大学), 河口洋一(徳島大学), 佐川志朗(兵庫県立大学)
*Yumi YAMADA(University of Hyogo,), Kota TAWA(NIES, University of Hyogo,), Masami HASEGAWA(Yamashina Institute, Toho Univ.), Yoichi KAWAGUCHI(Tokushima Univ.), Shiro SAGAWA(University of Hyogo,)

 本研究では、日本国内で再導入された絶滅危惧種「コウノトリ」のGPS追跡位置情報と環境変数との関係性から出現確率を推定し、日本全国の分布予測を行うことを目的とした。兵庫県・福井県・千葉県にて放鳥された個体に装着されたARGOS GPSの追跡データをもとにデータクリーニングを施し、約20万件の精度の高い観測記録を得た。これらの位置情報を在データとして、ALOS高解像度土地利用土地被覆図(JAXA)やSRTM DEM(EROS)から加工した地形情報、水条件などの環境変数をモデル化し、全国規模の予測を実施した。種分布推定モデルにはMaxEntとGLMを用い、バックグラウンドデータ(GLMにおける偽不在データ)は設置するエリアを5種に分けた。また別デバイスを装着して福井県から野外放鳥された5個体の観測位置を独立データとしてモデル評価に用いるという独自の評価の工夫を行った。
 結果GLMの予測値の分布はオーバーフィッティングが見られたため、MaxEntの予測結果を考察することとした。環境変数で最も出現確率に効くのは水田面積の割合で、次に地下水位が高い土地面積の割合、傾斜角度と続いた。
 本研究はコウノトリの分布予測における地理的要因および環境変数の重要性を示すとともに、再導入後の種のモニタリングや土地の保全に対する有用な知見を提供するものである。本発表では、これらの結果と考察を詳述し、分布予測モデルの適用可能性についても議論する。


日本生態学会