| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) D03-05  (Oral presentation)

核DNAマーカーを用いたバラタナゴ(Rhodeus ocellatus)の導入および交雑状況の解明
Introduction and hybridization status of Rosy bitterling (Rhodeus ocellatus) revealed by nuclear DNA markers

*太古数馬(兵庫県立大学大学院), 鬼倉徳雄(九州大学大学院), 高橋鉄美(兵庫県立大学大学院)
*Kazuma TAIKO(University of Hyogo), Norio ONIKURA(Kyushu University), Tetsumi TAKAHASHI(University of Hyogo)

 ニッポンバラタナゴRhodeus ocellatus kurumeus Jordan and Thompson, 1914は日本に固有で,かつては瀬戸内海の流入河川および九州北部の河川に広く分布していた.しかし,1940年代に別亜種であるタイリクバラタナゴRhodeus ocellatus ocellatus (Kner, 1866)が偶発的に導入されて,急激に分布を拡大した結果,各地で両亜種間の交雑がおこっている. さらにニッポンバラタナゴには,遺伝的に明確に区別できる九州クレード,近畿クレード,および四国・山陽クレードに区別できるが,クレード間の交雑に関する知見は少ない.一方で,亜種間およびクレード間の交雑個体は,形態的に識別することが難しい.よって,ニッポンバラタナゴの保全には,遺伝学的手法を用いた亜種及び各クレードの識別が必要である.そこで,本研究では,ddRAD-seqによって得られたDNA配列から,両亜種および,ニッポンバラタナゴ内のクレードを識別する一塩基多型(SNP)を探索した.さらに,NGSを用いて,複数の共優性マーカーを開発し,阪神地域・四国及び九州のニッポンバラタナゴの遺伝的素性を調べた。その結果,タイリクバラタナゴのみならず,国内におけるクレードの他地域への導入も確認された。


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