| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) D04-02  (Oral presentation)

外来社会性昆虫の早期発見・防除のための最新技術開発と防除システム構築
Development of the novel technology and construction of a control system for early detection and control of invasive alien social insects

*坂本洋典(国立環境研究所), 坂本佳子(国立環境研究所), 神宮周作(対馬市役所), 内堀隼人(東海理化), 中嶋信美(国立環境研究所), 五箇公一(国立環境研究所)
*Hironori SAKAMOTO(NIES), Yoshiko SAKAMOTO(NIES), Syusaku SHINGU(Tsushima city government), Hayato UCHIBORI(TOKAI RIKA), Nobuyoshi NAKAJIMA(NIES), Koichi GOKA(NIES)

2024年、要緊急対処特定外来生物ヒアリSolenopsis invictaの国内侵入は24事例と、2017年以降2番目に多い数へと至った。さらに、同年3月7日に緊急防除を実施した博多港のヒアリ大型野外巣からは、働きアリ4,000個体に加え、30個体程度の女王アリまでもが確認され、ヒアリの定着が極めて至近の脅威だと改めて示された。長崎県対馬に定着した中国南部原産のツマアカスズメバチVespa velutinaも、対馬全域への分布拡大が判明し、本土への侵入リスクが強く警戒される。侵入後30年を経たアルゼンチンアリLinepithema humileに関しては、分布拡大と共に、堤防の法面や街路樹の樹幹といった防除が難しい複雑な景観への侵入・営巣が報告されている。これら多様な外来社会性昆虫問題に対応可能な防除を実装すべく、国立環境研究所では技術開発と共に、各地方自治体と連携した防除システムの構築・高度化を常時進めている。ヒアリに対し、有効な防除用薬剤の選定を進めると共に、検出の迅速化のため、簡易的な遺伝子増幅手法であるLAMP法に基づく同定キットの港湾・自治体等への配備を進めた。ツマアカスズメバチ防除のため、対馬にて地域レベル化学的防除試験を実施し、翌年の新女王数・比率が対照区に比して大幅に減少することを示した。立体的な環境に営巣したアルゼンチンアリに効率的な薬剤投与を可能にするため、粘着性の高いグリスを基質としたベイト剤を新規共同開発するなど、化学的防除の高度化を果たした。本講演はこれら外来社会性昆虫に対する防除技術開発の最新情報について紹介する。


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