| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) D04-05  (Oral presentation)

高標高域から延びる登山道は高山・亜高山帯への外来植物種の拡散を助長するか
Do hiking trails extending from high elevations aid the further spread of alien plant species in subalpine and alpine zones?

*小山明日香(森林総研), 江川知花(農研機構 農環研), 赤坂宗光(東京農工大学)
*Asuka KOYAMA(FFPRI), Chika EGAWA(NIAES NARO), Munemitsu AKASAKA(Tokyo Univ of Agri and Tech)

山岳域への外来種侵入の懸念が高まっている。山岳域は高山性種をはじめとする地域固有の群集から成る保全上重要な生態系であり、環境条件が厳しいために外来種侵入のリスクが低いと考えられてきた。しかしながら、高標高域に達する道路や登山道などの人工コリドーが非高山性外来種の導入や定着を可能にする例が世界から報告されつつある。本研究では、ロープウェイによって低標高域から直接到達できる高標高域を始点とする登山道に着目し、外来植物が高山・亜高山帯の登山道上に拡散しているかを検証した。

国内のロープウェイを有する7山岳域を対象に、登山道始点(ロープウェイ終着地周辺)および登山道上に出現する外来植物種を記録し、出現記録数に影響する種特性(生活型、生活史、侵略性、種子重、種子散布高)を解析した。結果、外来植物55種が記録され、うち14種が5山岳域の登山道上で記録された。出現した外来植物種数および記録数は、登山道始点の外来植物種数が高いほど高く、後者は登山道始点の標高が低いほど高かった。種ごとの解析では、登山道上での各種の出現記録数は、登山道始点で在および多年生で種子重が小さいほど高かった。

よって、ロープウェイによって到達できる高山・亜高山帯に外来植物が定着しており、そこから延びる登山道が外来植物の拡散に寄与しうると考えられた。本研究は保全上重要な高山・亜高山帯域を横断する登山道において外来種侵入のリスクを管理する必要性を示している。


日本生態学会