| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) D04-06  (Oral presentation)

絶滅危惧種ヒメフウロにおける在来および外来集団間の生育特性の比較【B】
Comparison of growth characteristics between native and exotic populations of an endangered species Geranium robertianum【B】

姉川盤音, 今西純一, 冨永達, *下野嘉子(京都大学)
Iwane ANEGAWA, Junichi IMANISHI, Tohru TOMINAGA, *Yoshiko SHIMONO(Kyoto Univ.)

 ヒメフウロ(Geranium robertianum)はヨーロッパを中心に北半球の温帯地域に広く分布する一・二年草である。ヨーロッパでは広域に分布する普通種であるが、日本では岐阜県、滋賀県、徳島県、高知県の石灰岩地にのみ分布が限定され、各県で絶滅危惧種に指定されている。1990年代以降、全国各地の路傍や林道沿いでもヒメフウロの生育が確認されており、海外から観賞植物として導入されたものが野生化していると考えられている。
 本研究では、外来個体が国内の広い範囲で生育可能な要因として、(1)海外から様々な系統が持ち込まれ、各系統が生育に適した地域に野生化している、(2)外来個体は在来個体よりも高い可塑性を持ち、様々な光条件下で高い適応度を示すという2つの仮説を考えた。仮説1を検証するために、MIG-seq法を用いてヒメフウロの集団遺伝構造を評価した。仮説2を検証するために、光条件の異なる実験区を圃場に設け、在来および外来個体を栽培し、その種子生産数を比較した。
 217個体から得た一塩基多型情報を用いて主成分分析を行った結果、日本に生育するヒメフウロは3グループに分けられた。石灰岩地域の在来個体からなるグループ、主に北海道・東北を中心とした冷涼な地域に分布する外来北方個体グループ、東北以南の温暖な地域に分布する外来南方個体グループである。日本には少なくとも2外来系統が導入され、それぞれ異なる地域に定着していることが示された。
 直射日光区と90%遮光区の2条件で栽培した結果、外来個体は遮光区に比べ直射日光区で種子生産数が多くなった一方、在来個体の種子生産数は条件によって大きな違いは見られなかった。外来南方個体の直射日光区における種子生産数はもっとも多く、在来系統よりも明るい環境へ適応していると考えられた。


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