一般講演(口頭発表) E01-04 (Oral presentation)
イトヨ属魚類から解き明かす交雑に対する種の堅牢性を規定する遺伝機構【B】
Genetic basis of robustness of species identity in the face of hybridization in sticklebacks【B】
*細木拓也(北海道大学, 日本学術振興会), 森誠一(岐阜協立大学), 香川幸太郎(国立遺伝学研究所), 西田翔太郎(岐阜協立大学), 久米学(石巻専修大学), 神部飛雄(国立遺伝学研究所, 総合研究大学院大学), 柿岡諒(琉球大学), 中本健太(東京大学), 飯野佑樹(東京大学), 小玉将史(鹿児島大学), 大場理幹(東京大学), 壁谷尚樹(東京海洋大学), 石川麻乃(東京大学), 吉田恒太(新潟大学), 山﨑曜(国立遺伝学研究所, 総合研究大学院大学), 永野惇(龍谷大学, 慶應義塾大学), 北野潤(国立遺伝学研究所, 総合研究大学院大学)
*Takuya K HOSOKI(Hokkaido University, JSPS), Seichi MORI(Gifu Kyoritsu University), Kagawa KOTARO(National Institute of Genetics), Shotaro NISHIDA(Gifu Kyoritsu University), Manabu KUME(Ishinomaki Senshu University), Hiyu KANBE(National Institute of Genetics, SOKENDAI), Ryo KAKIOKA(University of the Ryukyus), Kenta NAKAMOTO(The University of Tokyo), Yuki IINO(The University of Tokyo), Masafumi KODAMA(Kagoshima University), Satoki OBA(The University of Tokyo), Naoki KABEYA(TUMSAT), Asano ISHIKAWA(The University of Tokyo), Kohta YOSHIDA(Niigata University), Yo Y YAMASAKI(National Institute of Genetics, SOKENDAI), Atsushi J NAGANO(Ryukoku University, Keio University), Jun KITANO(National Institute of Genetics, SOKENDAI)
どのような生殖隔離が幾つあれば、種の融合は阻止され、種は維持されるのだろうか。種分化の二大法則であるホールデン則とラージX効果は、生殖隔離に対する性染色体の大きな役割を示唆している。一方で、自然界において二種が交雑したときに、性染色体が規定する生殖隔離機構によって種の融合が防がれているかどうかは依然不明である。上述の問いに対し、我々はトゲウオ科魚類のイトヨとニホンイトヨを材料に追究している。まず両種が同所的に生息する集団を対象として集団遺伝解析を行ったところ、北海道の限られた河川や東日本大震災直後の津波跡地で交雑が生じながらも、異種のゲノムが排除されることで二種の融合が防がれていることが示唆された。その遺伝基盤を検証するために、生殖隔離に関わる遺伝子座を同定した上で、津波跡地における10世代にわたる異種ゲノム排除過程との関連を調べた。既知の性的隔離や雑種不妊に加え、海へ出ていくか津波跡地に残るかといった生息地の好みや、津波跡地での生存といった主要な生殖隔離の原因遺伝子座の多くは性染色体に集中していた。津波跡地の雑種集団では、性染色体上のニホンイトヨ由来のゲノムの排除が交雑から数世代以内に完了していた。興味深いことに、性染色体での排除の完了以降も常染色体上のほとんどの領域で排除が進行、完了した。そこで常染色体を含めたゲノム全体の排除過程を説明可能な遺伝基盤を、個体ベース・モデルによるシミュレーションから求めた。その結果、性染色体のもつ生殖隔離への大きな効果に加え、常染色体における1遺伝子座由来と、2遺伝子座の間で生じる相互作用由来の効果の弱い雑種異常が存在する場合において、ゲノム全体にわたる種の融合が防がれることが示唆された。