| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(口頭発表) E02-04 (Oral presentation)
生物の種分化において、生殖隔離の進化は重要なステップであり、その遺伝的基盤を解明することは進化生物学の中心課題のひとつである。昆虫の性フェロモンは種ごとに厳密に制御された化学プロファイルを持ち、その進化が近縁集団間の生殖隔離の成立に大きく関与している。 スジグロシロチョウ(Pieris melete)とヤマトスジグロシロチョウ(Pieris napi)は日本に分布する近縁なモンシロチョウ属のシロチョウである。これらの種は同所的に生息し、オス特異的な性フェロモンを生成するが、その組成は種間で異なることが知られている。そこで、性フェロモン組成の違いを生む遺伝的背景と進化的動態を明らかにすることを目的に、全ゲノム解析、ゲノム編集、および日本全国における性フェロモン組成の変異解析を行った。その結果、フェロモン組成に関与する複数の遺伝子を同定し、さらに日本全土のフェロモン組成の比較から、地理的に近い個体群ほど種間のフェロモン組成差が顕著になる傾向が明らかになった。これらの知見をもとに、シロチョウにおけるフェロモン組成の進化と生殖隔離の成立機構について議論したい。