| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) E02-07  (Oral presentation)

生殖様式に関連した花形質の進化過程とその遺伝的背景
Genetic basis of the evolution of floral traits associated with mating systems

*土松隆志(東京大学), 中山啓(東京大学), 池谷尚(東京大学), 土金勇樹(東京大学), 渡辺均(千葉大学), 上原浩一(千葉大学)
*Takashi TSUCHIMATSU(University of Tokyo), Hajime NAKAYAMA(University of Tokyo), Sho IKEYATSU(University of Tokyo), Yuki TSUCHIKANE(University of Tokyo), Hitoshi WATANABE(Chiba University), Koichi UEHARA(Chiba University)

被子植物では、他殖性から自殖性への進化的移行が何度も繰り返し起きてきた。自殖性の進化に伴い、花弁退縮や花粉数減少といった自殖シンドロームと呼ばれる形質群の進化が比較的急速に起こることが知られている。本研究では、種内に自家不和合性、自家和合性亜種の両方が存在するナス科Petunia axillarisに着目し、ゲノムワイド関連解析(GWAS)による花粉数関連遺伝子座の同定を通して、自家和合性亜種における花粉数減少の遺伝的背景に関する解析を行った。まず、祖先的と考えられる自家不和合亜種に由来する97系統を用いてGWASを実施し、花粉数変異と関わるSNPをゲノムワイドに特定した。続いて、これらの花粉数関連遺伝子座に対応するゲノム部位を自家和合亜種で調べたところ、花粉数を減らす効果を持つ対立遺伝子の頻度が自家和合亜種では全体として増加している傾向があることが明らかになった。さらに、自家不和合性亜種におけるGWASから自家和合性亜種の花粉数表現型をある程度予測できること、花粉数関連遺伝子座に自家和合性亜種において自然選択の痕跡が見られることも明らかになった。これらの結果は、祖先的な自家不和合性亜種に存在する多型が自家和合性亜種における花粉数の急速かつ適応的な減少に貢献したことを示唆する。今後、花粉数関連遺伝子の機能解析を通して自殖シンドロームの進化の詳細な解明が期待される。


日本生態学会