| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(口頭発表) E02-12 (Oral presentation)
中国内陸部に位置する黄土高原では、砂漠化や土壌侵食の対策として単一樹種植栽による緑化が行われてきた。近年、これら緑化林を生態系機能の高い自然植生に移行する必要が認識されているが、樹木への養分供給の観点から重要な土壌の養分特性の違いは不明な点が多い。そこで本研究では、樹木の根圏に着目し、単一樹種の緑化林と自然植生で土壌の養分特性を比較した。自然植生としてリョウトウナラ(以下ナラ)林、緑化林としてこの地域で代表的なニセアカシア(以下アカ)林、油松林および側柏林を比較した。それぞれの林分の3地点から鉱質土壌0~10cm深を採取した。採種した土壌から根を取り出して軽くふるい、根の周りに残った土壌を根圏土壌、それ以外を周囲土壌とした。それぞれの土壌の全有機炭素・全窒素・全リン・有効態リン・利用性の低いリン・pHを測定した。ナラ林の周囲土壌の全有機炭素量は他の林分より多く、ナラ林とアカ林の周囲土壌の全窒素量は他の林分より多かった。ナラ林の周囲土壌および根圏土壌の有効態リン量は他の林分より多かったが、全リン量や利用性の低いリン量は他の林分より少なかった。周囲土壌のpHは油松林で最も低くアカ林で最も高かったが、根圏土壌のpHは林分間の差が明瞭でなかった。アカ林と側柏林の周囲土壌および根圏土壌では有効態リン量と全有機態炭素量の間に正の相関があった。ナラ林の根圏土壌では利用性の低いリン量と全リン量の間に正の相関あったが、周囲土壌ではその傾向は不明瞭だった。以上をまとめると、ナラ林は全有機炭素量や窒素量利用性の高いリン量が他の林分より多い一方で、土壌中の全リン量が他の林分より少ない点に特徴があった。全有機炭素量や全リン量と有効態リン量や利用性の低いリン量の間の関係は林分によって異なっており、それぞれの林分で異なる養分動態の特徴を持つと考えられた。