| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) E02-13  (Oral presentation)

新潟県佐渡市を例にした農業生態系における窒素・リン・カリウムのフローと循環の解析
Nitorngen, phosphorus and pottasium flow analysis on agroecosystem in Sado city, Niigata prefecture

*三島慎一郎(農研機構)
*Shinichiro MISHIMA(NARO)

新潟県佐渡市は人口5.4万人を有しほとんどが特別栽培となる水稲や佐渡牛等の農業を主要な産業としている。農業生産において島外からの購入した肥料を使用する一方で、肥料成分を豊富に含み市民生活から発生する下水汚泥は島外に搬出し最終処分を行っており、生ごみ等も廃棄されている。これを市内で農業等に有効利用できるならば、処分費用の削減、購入する肥料の削減と生産費の低減といったメリットがある。しかし重金属類の農地土壌負荷などの環境問題、下水汚泥という負のイメージによる消費者からの風評被害といった問題もある。本発表では佐渡市における肥料成分で見た食飼料消費、人・家畜からの排泄、これを堆肥化などした場合の量、さらに化学肥料の現状での使用量を推計し、現状考えられる肥料成分のフロー、および循環利用に変えたときにどのように肥料成分フローが変わりうるかを試算した。下水汚泥・食品廃棄物由来の堆肥中のNPK量は島外から来る肥料の1割程度であった。他方で窒素・リン・カリウムの投入の9割を占める特別栽培の水稲へは汚泥肥料を使用できない。地元の意向として、まず花卉や飼料など非食用作物への施用を考えており、その場合には十分な肥料資源となりうることが分かった。今後、継続的な汚泥肥料の施用が行われたときに土壌NPK量、或いは重金属類蓄積の有無などの影響を見つつ、活用を広げられる可能性があった。


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