| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(口頭発表) E02-15 (Oral presentation)
海岸砂丘は固有の海浜植物が自生する貴重な生態系であるが、近年開発や海岸侵食によって世界的に面積が減少している。海岸砂丘の生態系サービスを多面的に評価することは、海岸砂丘を適切に保全するための足掛かりとなる。炭素の貯留や隔離機能は、生態系サービスを評価する上での一つの指標となりえるが、それを把握するためには、二酸化炭素の吸収と排出(CO2フラックス)に関する特性を明らかにすることが求められる。しかしながら、そのような海岸砂丘におけるCO2フラックスの特性に注目した研究例は非常に限られている。そこで本研究では、海岸砂丘に自生する代表的な4種類の海浜植物群落における、CO2フラックスの季節変化に関する特性を明らかにすることを目的とした。
本研究の調査地は鳥取大学乾燥地研究センター敷地内の海岸砂丘である。海浜植物であるカワラヨモギ、ハマゴウ、コウボウムギ、ケカモノハシが優占する各群落を対象とし、2021年6月から2022年6月(1月~3月は欠測)および2023年7月から2024年6月まで、定期的なCO2フラックスの観測(月1~2回)を実施した。観測には携帯型の自動開閉チャンバーシステムを用い、土壌呼吸速度、異なる光環境下での純生態系CO2交換速度、生態系呼吸速度(暗幕で完全遮光時)を測定し、総一次生産速度(GPP)を算出した。
2023年7月後半から8月前半にかけては降雨が少なく、土壌水分が低下した。その際、ハマゴウ以外の海浜植物ではGPPの低下が見られ、ハマゴウでは低下が見られなかった。これは、低木のハマゴウの根が他の海浜植物より深くまで分布していたため、夏季の乾燥ストレスを受けにくかったことによるものと考えられた。冬季にはカワラヨモギ以外の海浜植物は完全に落葉するか、地上部が枯死して褐色に変色したため、光合成を観測することができなかった。一方、カワラヨモギは唯一冬季も一部緑白色の葉が残り、光合成能を示した。