| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) E03-02  (Oral presentation)

ノンパラメトリック検定はどのような内容を検定しているのだろうか
What is the hypothesis tested in nonparametric statistical tests

*粕谷英一(大阪公立大学)
*Eiiti KASUYA(Osaka Metropolitan University)

データ解析で最もよく出会うケースの1つに、2つの条件の間で目的変数の大小を比較する場合がある。古くはt検定がこのケースを扱う検定である。ノンパラメトリックな検定の中では、Mann-WhitneyのU検定(別名、Wilcoxon順位和検定)、Fligner-Policelloの検定、Brunner-Munzelの検定などが、このケースを扱う。ノンパラメトリックな検定は、特定の分布を仮定しないことから、データの分布がどうであっても使えると思われていることも少なくない。まず、ノンパラメトリックな検定の特徴を概観し、その後、帰無仮説が正しい時に誤って有意な結果を得て帰無仮説を捨ててしまう、第1種の誤りの率を求めた。さまざまなデータの分布のもとで、平均値が等しいという帰無仮説、中央値が等しいという帰無仮説についての、第1種の誤りの率を求めた。Mann-WhitneyのU検定、Fligner-Policelloの検定、Brunner-Munzelの検定はいずれも、平均値が等しいという帰無仮説、中央値が等しいという帰無仮説の両方あるいは片方について、第1種の誤りの率が有意水準よりも実質的に大きく、過剰に甘くなっている場合があった。
これらのノンパラメトリックな検定については、平均値が等しいあるいは中央値が等しいという帰無仮説について、データの分布のことは気にしないで使えるというのは誤りだと考えられる。どんな場合に、平均値が等しいあるいは中央値が等しいという帰無仮説について、大きな第1種の誤りの率をもたらし、過剰に甘い検定となってしまうかを、実際に使われる帰無仮説との関係とも合わせて、検討する。
ここで扱った2条件間での目的変数の大小の比較は、他の場合の分析の基本ともなり、得られた結論はより複雑なケースにもすぐに波及する。


日本生態学会