| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) E04-03  (Oral presentation)

「ナチュラルサイエンスイラストレーション制作ガイドライン」の作成に向けて
Towards the Making of 'Natural Science Illustration Creation Guidelines'

*裘夢雲(日本大学 芸術研)
*Mengyun QIU(Nihon Univ.)

 本研究はナチュラルサイエンスイラストレーション(以下NSI)の制作をよりスムーズかつ効果的に進めるために,制作者間の理解の違いやイメージの差異を近づけることを目的とする。
 NSIの制作には,多くの場合,依頼者や監修者など,さまざまな立場の人が関わり,多方の協働によって完成する。イラストレーターが異なる立場の人から多様な情報をもらい,それをわかりやすい視覚言語に訳す役割を担う。しかし,得られる情報が足りない場合,制作関係者間で齟齬が生じ,制作方向が偏り,NSIの基本である科学的精確性が損なわれる可能性がある。そこで本研究では,コミュニケーションの効果を向上させる方法を探った。制作関係者間のコミュニケーションが円滑になれば,精確さが上がることが期待できる。
 そのため,制作者と依頼者・監修者側の意識の違いや,制作における問題点を考察し,相互コミュニケーションを充実させるための提案の基礎的要因を明らかにした。さらに,図形の造形理論を基に,各類型のNSIの表現上の性質と,その根拠となる実際の対象物の性質と論理的情報の内容を分析した。
 その上で,制作初期の情報交換を円滑にするための一助として,「ナチュラルサイエンスイラストレーション制作ガイドライン ver. 0.0.1」を作成した。このガイドラインにより,イラストレーターと依頼者・監修者の間のコミュニケーションの基盤が明確になり,制作方針の共有や,科学的で効率的な情報の把握方法等の指針を提供することが可能になると考える。円滑なコミュニケーションを実現することで,制作関係者が協働しながら科学的精確性を高めるだけでなく,質の高いNSIの制作に向けた知見の共有も促進させることが期待される。


日本生態学会