| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(口頭発表) H01-02 (Oral presentation)
現生人類が登場して世界各地に分散した後期更新世から完新世にかけて、多くの陸棲メガファウナの絶滅や個体群交代などが報告され、当時の人類活動や気候変動との関連性が議論されている。しかし、海棲メガファウナに関する報告例は極めて少ない。本研究では、道東釧路を中心に国内3地域6サイトの先史時代遺跡から出土したイルカの骨からDNAとコラーゲンを抽出して、ミトコンドリアD-loop配列の解読および放射性炭素年代測定を行った。釧路市の東釧路貝塚から出土したイルカ類は全て4200年前よりも古い年代を示し、特にカマイルカは同時代の東京湾の遺跡および現在の日本沿岸に生息するカマイルカ個体群と共通するハプロタイプを保有していた。一方、同じ釧路に位置する幣舞遺跡から出土したイルカ類は全て3000年前よりも新しい年代を示し、この遺跡から出土したカマイルカは遺伝的には現在の太平洋沖合個体群と共通するハプロタイプを保有していた。本研究の結果は、道東地方においてイルカ類に少なくとも2回の大規模な個体群交代が起きたことを示唆する。本発表では、こうした結果を当時の気候変動などと絡めて議論する。