| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) H01-05  (Oral presentation)

底生無脊椎動物群集を用いた複数化学物質の包括的な生態リスク指標の開発
Development of a comprehensive ecological risk index for multiple chemical substances using benthic invertebrate communities

*横溝裕行(国立環境研究所), 都築洋一(東京大学), 林岳彦(国立環境研究所), 山本裕史(国立環境研究所), 大野浩一(国立環境研究所), 竹下和貴(東洋大学)
*Hiroyuki YOKOMIZO(Natl. Inst. Environ. Studies), Yoichi TSUZUKI(University of Tokyo), Takehiko HAYASHI(Natl. Inst. Environ. Studies), Hiroshi YAMAMOTO(Natl. Inst. Environ. Studies), Koichi OHNO(Natl. Inst. Environ. Studies), Kazutaka M TAKESHITA(Toyo Univerisity)

生態系における化学物質の影響を包括的に評価するため、生態リスク指標を開発した。本研究では、環境中の化学物質の曝露によって減少した生物の種数を推定し、その減少量を指標とした。底生無脊椎動物群集と環境変数のデータは、環境省の河川環境データベースおよび国土交通省の公共用水域水質測定データを用いた。対象とした化学物質は、健康保護に関する要監視項目であり、2006~2009年度の測定データを基に解析を行った。生物の種数を説明する統計モデルとして、負の二項分布を用いた一般化線形モデルを構築した。説明変数には、化学物質の主成分変数、pH、調査月、河床堆積物や河川名のカテゴリ変数を用いた。このモデルを基に、化学物質の影響がない場合の生物種数を推定し、その値と実測値の差を種数の減少量と定義した。そして、すべての化学物質による減少量を合計し、生態リスク指標を算出した。化学物質の影響がない場合の種数は、それぞれの化学物質濃度の5%分位点に対応する種数の推定値とした。解析の結果、ほぼすべての調査地点と調査月で、化学物質の曝露による生物種数の減少が確認された。ただし、本研究では種ごとの個体数を考慮しておらず、種の均等性や優占種の影響は評価していない。今後の課題として、種ごとの個体数を考慮した種多様性に基づく指標への拡張が求められる。


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