| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) H02-10  (Oral presentation)

植物上の節足動物群集集合を環境DNAと植物揮発性物質から紐解く【B】
Revealing arthropod community assembly on plants from environmental DNA and plant volatiles.【B】

*米谷衣代(近畿大学)
*Kinuyo YONEYA(Kindai Univ.)

 近年、徐々に研究が進み始めた植物上の節足動物の環境DNA技術を時系列データの取得に応用するためには、非破壊的な方法の採用が必須である。非破壊的に植物上の環境DNAを集める方法には、我々が開発したプラント・フロー・コレクション法(蒸留水または水道水を植物体に散布したり、雨を利用したりして、植物表面を流れる水を植物の基部に設置した容器で回収する方法)やふき取り法などが提案されている。しかし、これまでの研究では、それらの方法を経時的調査に適応した例がない。本研究では、プラント・フロー・コレクション法とふき取り法を組み合わせて、セイヨウアブラナ Brassica rapa上に形成される節足動物の群集を調査し、従来の方法である目視調査法と比較すること、また、それぞれの方法で観察された節足動物の群集集合と節足動物の行動を制御することで知られている植物揮発性物質の組成との関係を明らかにすることを目的とした。
 セイヨウアブラナ4株を植えたコンテナを1区画とし、計6区画を実験圃場に配置した。その後、2日に1回、計37回、目視調査とeDNA採集、さらに、植物揮発性物質の捕集を行った。eDNAメタバーコーディング分析の結果、種まで同定できた節足動物の内、ASV数はダニ目、ハエ目、チョウ目の順に多かった。リード数はチョウ目、ハチ目、アザミウマ目の順に多かった。野外調査の個体数はカメムシ目、チョウ目、ハチ目の割合が高かった。目視では確認が困難である微小昆虫がDNA解析で多く検出された。モンシロチョウに注目すると、eDNAのリード数の増減と個体数の増減パターンが類似していた。一方、植物揮発性物質は想定よりも全体的にピークが小さく、安定して検出される物質がほとんどなかった。本発表では、限られた揮発性物質のデータではあるが、目視と環境DNAから得られた節足動物群集動態が揮発性物質組成と関係するか解析した結果を示す。


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