| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(口頭発表) H02-13 (Oral presentation)
植物体の色彩において、花や果実などの生殖器官の色彩が送粉者や種子散布者とのコミュニケーションに役立つことは知られている。しかし、葉・葉柄・茎などの栄養器官の色彩がカラフルである理由は様々な仮説はあるが、その一般的な役割は提唱されておらず、認められていない。本研究では「植食性昆虫のカモフラージュを弱体化させている」という仮説を検証するためにアオスジアゲハ(Graphium sarpedon)の幼虫を模したものを油粘土で作成し、クスノキ(Cinnamomum camphora)の葉柄を赤くマジックで着色したものとそのままのものの二種類に設置、一週間後に回収してその被食率を粘土の食痕から被食率を計測した。また、設置場所(葉、葉柄、枝)による被食率の関係も同様の手順で調べた。その結果、緑色の葉柄よりも赤く着色した葉柄に設置したモデルの被食率が高くなった。また、葉・緑色の葉柄で被食率が低くなり、枝、赤色の葉柄で被食率が高くなった。これらの結果から背景色が緑色ではないと被食率が高まることが分かった。今回の検証から幼虫の背景色が赤色である場合、鳥類が幼虫を発見しやすくなることが示唆された。今後は幼虫が赤色の葉柄を忌避するのか実際の幼虫を用いた検証を行い葉柄色が植食性昆虫の適応度に関係するか確かめていきたい。