| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) H02-18  (Oral presentation)

ノブドウ果実の季節で異なる着色パターンとその種子散布者
Seasonally different coloration patterns and their seed dispersers of Ampelopsis glandulosa

*北村俊平, 大崎萌恵, 佐藤志織, 三木まどか(石川県立大学)
*Shumpei KITAMURA, Moe OSAKI, Shiori SATO, Madoka MIKI(Ishikawa Pref. Univ.)

ブドウ科ノブドウは夏から秋にかけて連続的に開花・結実する被食散布型植物であるため、結実時期によって種子散布者が異なると考えられる。本研究では、ノブドウの結実期間を通した果実の着色パターンの観察と自動撮影カメラによる果実消費者の観察を3年間行い、ノブドウの量的に有効な種子散布者を解明することを目的とした。果実の着色パターンの観察は石川県立大学の6個体(夏:4個体、秋:6個体)を対象として、夏(2024年7月中旬~9月中旬)に40果序240果実、秋(9月下旬~12月上旬)に39果序182果実の色を緑、赤紫、赤白、紫、青、青白、白の7段階で記録した。石川県立大学と石川県林業試験場に自動撮影カメラを計12~15台を設置し(2022年10月~12月、2023年と2024年は8月~12月)、果実消費者を特定した。ノブドウ果実の着色パターンは夏と秋で異なる個体が見られ、夏は3個体で果実の色が緑、赤白、青白、白の順に変化したが、1個体は緑、赤紫、紫、青、青白、白の順に変化した。秋は6個体中5個体で緑、赤紫、紫、青、青白、白の順で変化したが、1個体は夏と同じ緑、赤白、青白、白の順に変化した。果実が緑から白に変化するのに夏は5日~15日、秋は18日~31日かかり、同一個体内では夏に早く白くなった。3年間で果実270個が持ち去られ、内訳は鳥類7種で83%、哺乳類2種で17%だった。持ち去り数が10%を超えたのは、シロハラ(31.5%)、マミチャジナイ(22.6%)、ヒヨドリ(17.4%)、タヌキ(12.2%)の4種だった。持ち去られた果実の色は白色が66.7%、青白が20.7%、青が7.8%、不明が4.8%だった。果実の持ち去り数は調査地と調査年で大きく異なり、石川県立大学では2022年に0個、2023年に46個、2024年に52個、石川県林業試験場では、2022年に132個、2023年に27個、2024年に13個だった。ノブドウは秋の果実の持ち去り数が少なく、12月には果実が腐るため、他種の果実が少ない夏に成熟することで種子散布する機会を増やしていると考えられた。


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