| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) H02-20  (Oral presentation)

種間相互作用強度は相利共生や被食捕食といった関係の違いを超えて普遍的に分布する
Interspecies interaction strength universally distributes beyond the distinctions among relationships such as mutualism and predation.

*北條拓也(大阪大学大学院, 広島大学大学院), 新垣大幸(大阪大学大学院, 広島大学大学院), 藤本仰一(広島大学大学院)
*Takuya HOJO(Osaka Univ., Hiroshima Univ.), Taiko ARAKAKI(Osaka Univ., Hiroshima Univ.), Koichi FUJIMOTO(Hiroshima Univ.)

進化を経て多様化した生物種が共存する群集では、各種はどの程度の強さで関係しあっているだろうか。 被食捕食関係(食物網)における種間相互作用の強さ(Interaction Strength:IS)は、定性的には弱い方へ偏る傾向があり、1つだが対数正規分布に従う報告がある[J. Bascompte(2005)]。しかし、相利共生など被食捕食関係以外の相互作用タイプにおけるISがどのような分布に従うのか、定量的に調べられておらず、さらにはIS分布が群集の進化を通じてどう形成されるかは、十分に解明されていない。
本研究では始めに、被食捕食関係以外のIS分布を調べるために、様々な相互作用タイプが記録された2つの公開データを、分布の形状を定量する歪度および尖度から解析した。被子植物(19種)と訪花虫(124種)からなる相利共生群集[Novella-Fernandez R et al (2019)]と、複数の相互作用タイプを含む農業生態系(549種)[Michael J. O. Pocock et al. (2012)]の解析から、各相互作用タイプのIS分布は弱い方へ偏り、裾の重い分布であることを明らかにした。このことから、相互作用タイプによらず、IS分布は群集で共通することが示唆された。
次に、このIS分布の形成過程を調べるため、種間相互作用に応じた各種の個体数時間変動の数理モデル(Generalized Lotka-Volterra model)に、群集の進化(種分化・移入・絶滅)を新たに導入した。すると、相利共生など他の相互作用タイプを含めた群集の進化では、共存種数が150種を超え、IS分布は弱い方へ偏って裾の重い分布が形成された。さらに、公開データおよび数理モデルの双方において、近縁種を科や目などにまとめた分類群の間のIS分布も弱い方へ偏り、裾の重い分布を示すことを発見した。
これらの結果は、複数の相互作用タイプを介して多種が共存する進化の帰結として、群集内の種間相互作用の強さは弱い方へ偏って裾の重い分布を形成することを示唆する。


日本生態学会