| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) H03-12  (Oral presentation)

ステージ構造化された相利共生の進化:子を助けるか、親を助けるか、両方を助けるか【B】
When to help juveniles, adults, or both: analyzing the evolutionary models of stage-structured mutualism【B】

*仲澤剛史(国立成功大学), 片山昇(小樽商科大学), 山尾僚(京都大学), 内海俊介(北海道大学), 山道真人(国立遺伝学研究所)
*Takefumi NAKAZAWA(Natl. Cheng Kung Univ.), Katayama NOBORU(Otaru Univ. Commerce), Akira YAMAWO(Kyoto Univ.), Shunsuke UTSUMI(Hokkaido Univ.), Masato YAMAMICHI(Natl. Inst. Genetics)

相利共生は自然界に広く見られ、個体群や群集構造、生態系機能にとって重要である。最近の研究では、生活史のステージ(幼生と成体など)を考慮することで、相利共生の重要性をよりよく理解できるとされている(stage-structured mutualism)。しかし、どのようなステージ構造を持つ相利共生が進化するのか、まだ分かっていない。本研究では、相利共生のパートナー種がホスト種の異なる生活史ステージに対してどのように協力すべきかを理論的に調べた。結果、相利共生の努力配分は、パートナーが一つのステージとの関係を強化する際に、もう一方のステージとの関係がどれだけ弱くなるか、そのトレードオフに依存して変わることが分かった。具体的には、特定のステージとの関係が有利な場合、そのステージに特化した関係が進化しやすい。ただし、トレードオフが弱い場合、ステージ間でパートナーを共有しやすい。さらに、トレードオフが強い場合、初期の状態に応じて、幼生だけ専用または成体だけとの関係が進化することも見られた。これらの結果は、相利共生が予想以上に複雑であり、特定の生活史ステージだけを見ることで、その強さを過小・過大評価りする可能性があることを示唆する。この研究は、相利共生における個体成長と生活史ステージ構造が影響する複雑な共生ネットワークを理解するための基礎的知見を提供する。


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