| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) H03-15  (Oral presentation)

局所的スケールの景観は都市の鳥類の出現を特徴づける
Local-scale landscapes characterize the distribution of urban birds

*増田侑太朗, 大崎晴菜, 立木佑弥(東京都立大学)
*Yutaro MASUDA, Haruna OHSAKI, Yuuya TACHIKI(Tokyo Metropolitan University)

 景観は野生動物の分布を決定する大きな要因のひとつであり、森林や農地などの景観要素はそれぞれ特有の生態系を形成する。鳥類は利用する資源や生息環境が多様であり、地域の景観によって鳥類相が大きく異なることが知られている。例えば、森林面積の大小によって鳥類の種や個体数が異なるという報告が多数ある。しかしながら、これまでの研究は数km以上離れた地域間で鳥類相と景観の関連を解析したものが多く、連続的な地域における数十~数百mスケールの局所的な景観の影響については十分に検討されていない。
 本研究では、局所的スケールの景観が都市の鳥類の出現に与える影響を明らかにすることを目的として野外調査を実施した。神奈川県相模原市の境川に連続的な3か所の調査地を設定し、出現する鳥類の種と個体数を記録した。また、調査地から半径50~400 mのスケールに含まれる景観要素について、航空写真と現地踏査から樹林、農地、住宅地の3つに分類し、それぞれの面積割合を算出した。その後、各景観要素を説明変数、鳥類の在不在情報を応答変数として一般化線形モデルを利用し、AICによるモデル選択を行った。
 合計32種の鳥類が記録され、モデル選択された景観要素は種によって異なった。例えば、ヒヨドリやキジバトのように樹木に営巣する種では樹林モデル、カワラバトのように地表で採餌する種では農地モデル、スズメのように人工物を利用する種では住宅地モデルが選択された。このように、選択されたモデルの景観要素は各鳥類種の生態と関連するものが多かった。
 本研究は、局所的な景観が異なると出現する鳥類種が変化することを明らかにした。一般的に、近接する地域間では広域的には同じような景観であることが多い。一方で、局所的な景観の違いも考慮する必要がある。特に、都市部では住宅開発など人間の活動による局所的な景観の変化が生じやすく、鳥類の生息地選択に大きく影響すると考えられる。


日本生態学会