| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(口頭発表) I01-04 (Oral presentation)
並行複発酵は、麹菌によってデンプンがグルコースに分解される糖化の過程と酵母のグルコース利用によってエタノールが生じる発酵が同時に起こる発酵形式であり、日本の伝統産業の一つである清酒醸造の特徴である。清酒中のグルコースとエタノールの炭素安定同位体比は、原料米が並行複発酵を経た結果であるが、これらの炭素同位体分別についての知見は少ない。本研究では、清酒醸造を行い、並行複発酵における原料米から清酒中のグルコースおよびエタノールの炭素安定同位体比への変化を調べた。並行複発酵後のグルコースの炭素安定同位体比は、原料米の炭素安定同位体比よりも高い値を示した。糖化単独の過程ではグルコースの炭素安定同位体比は原料米から変化が生じなかったことから、発酵によるグルコースの消費が清酒中のグルコースの炭素安定同位体比の上昇要因になっていることが示唆された。一方で、清酒中のエタノールの炭素安定同位体比は、原料米よりも低い値を示した。並行複発酵におけるエタノールの炭素同位体分別は、単発酵と比べると小さく、並行複発酵の特徴である発酵中の糖化によるグルコース供給が、発酵によって上昇したグルコースの炭素安定同位体比を押し下げ、同時にエタノールの炭素同位体分別を小さくしていることが示唆された。