| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(口頭発表) I01-07 (Oral presentation)
自然条件下において、生物は季節の中で成長、繁殖している。例えば植物では、発芽・成長・開花・結実・老化などを含む発育の全過程が季節スケジュールを持つ。また、高温・凍結・強光・乾燥・病虫害など、ほとんどのストレスが季節性を持つ。一方、季節環境は大きな年変動をみせ、年による天候の違いが生物の成長や繁殖のタイミングや量に大きく影響することが、フェノロジーの長期観測から示されている。しかしながら、そのような年変動効果について、遺伝子発現レベルで解析されたことはない。我々のグループでは、アブラナ科シロイヌナズナ属の多年草ハクサンハタザオArabidopsis halleri subsp. gemmifera集団において、毎週のトランスクリプトーム時系列データを2年間取得することにより、発現に季節応答を示す遺伝子を特定した。その後、BrAD-Seq法で3′側配列のみを参照するDGE法の導入と、リファレンス配列の整備に伴い、検出感度が上昇し、より転写レベルの低い遺伝子の動態を把握することに成功した。対象種は常緑多年草で、栄養繁殖により多数のロゼットからなるパッチを形成するために、葉を長期にわたってサンプリングすることが可能であった。毎週トランスクリプトーム解析を継続し、データ取得が10年目に入った。本発表では、9年間4ヶ月の毎週トランスクリプトームを使って、年間変動の解析方法を検討した結果を報告する。データは、2013年7月~2022年10月の間、483週間にわたって取得され、欠測週が2回あった。1回につき6株の植物の葉を採取し、6x481=2886サンプルに対してRNA-Seqを実施し、そのうち99.5%以上がその後の解析に利用可能であった。代表的な遺伝子について、遺伝子発現の年間変動について解析したところ、それぞれの遺伝子に特徴的な年間変動パターンが検出された。