| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) I01-09  (Oral presentation)

成長解析による絶滅危惧種ミズアオイの生活史特性の解明
Life history characteristics of endangered species 𝙈𝙤𝙣𝙤𝙘𝙝𝙤𝙧𝙞𝙖 𝙠𝙤𝙧𝙨𝙖𝙠𝙤𝙬𝙞𝙞 with growth Diagnosing

*大森雛実, 永松大(鳥取大学)
*Hinami OOMORI, dai NAGAMATU(Tottori University)

ミズアオイは、ミズアオイ科の一年草で日本全国に分布する。池や川、用水路や水田などの水湿地に生育し、かつては人里周辺で水田雑草として広く生育していた。長らく防除すべき種として扱われてきたが、近年その個体数や自生地が著しく減少しており、環境省準絶滅危惧(NT)に指定されて鳥取県内では2ヶ所で確認されているのみである。ミズアオイの生活史は、防除と保全の両観点からすでにある程度明らかになっているが,鳥取で孤立化して残っている個体群の状況は不明である。そこで本研究では、鳥取に残るミズアオイの生活史特性を明らかにし、保全に向けた検討を行う目的でミズアオイと同属のコナギとの同所植栽の栽培試験をもとに成長解析を行った。ミズアオイ単独の植栽密度別実験の結果、自然高は密度に関わらず花期において同程度となった。高密度では枯死する個体も出たが,開花率は良好だった。個体あたりの乾重量は低密度で大きかったが、ポットあたり種子生産量は密度による違いが小さかった。コナギとの同所植栽実験では、ミズアオイはコナギが同数以上生育していると生存率が低くなることがわかった。自然高はミズアオイの方がコナギよりも実験期間中は高かったが、2種を1ポットに植栽するとミズアオイは花期になっても50 cm未満の個体が多かった。コナギと同所植栽した区では,ミズアオイの開花率は低くなり,個体あたり乾重量は7,8月に最も大きくなったものの、9月まで花序を確認できたものがほとんどなかった。ミズアオイはコナギが同所的に生育しない場合は高密度条件下でも繁殖が可能で、個体が生き残れる環境が用意できれば保全は可能であると考えられた。


日本生態学会