| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(口頭発表) I02-04 (Oral presentation)
インドネシアは世界の中でも主要な木材生産国であり、世界の木材供給においては、同国における持続的な林業の実現が重要である。そして、インドネシアでは林業樹種としてファルカタ(Falcataria falcata)を利用することが盛んになっている。ファルカタは成長が早く約7年で伐期を迎えるため木材として換金効率が高いことから、30年程前よりインドネシア・ジャワ島の住民林業において最も植栽される樹種であり、その住民林業は同国内において木材生産の20%を占める重要な生産形態である。樹木は、地域ごとの環境勾配に沿ったアリル頻度の変化等を含め、遺伝的な地域性により局所地域に適応し生育している。現在はファルカタの遺伝資源となる天然分布域の個体群において、今後の気候変動により遺伝的に生息不適地となる可能性が懸念されている。しかしながら、ファルカタは遺伝的な地域性等の集団遺伝学的側面における遺伝資源の評価がほとんどなされておらず、気候変動に対する遺伝的強靭性の解明が求められている。そこで遺伝的な地域性等の解明を通じて、気候変動に対する遺伝的強靭性の推定を行うために集団遺伝学的解析を行った。解析対象は天然林22集団361個体であり、DNA抽出後にdd-RAD seq法により作成したDNAライブラリーを次世代シークエンサーであるNovaseqで読み取りSNPデータを取得後、データ解析を行った。データ解析の結果、大まかに諸島ごとに遺伝構造が4つに分かれ、特にPapua内陸の高標高地帯で局所地域に適応している可能性が示唆された。またGenetic offsetによりPapua内陸以外の集団で将来の気候変動に対して遺伝的強靭性を有する可能性が示唆された。