| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(口頭発表) I02-08 (Oral presentation)
チョウジソウは環境省から準絶滅危惧種に指定されているが、文献上の自生確認地は多くはない。群馬県では文献上の自生地は1カ所しかなく、絶滅危惧ⅠAおよび野生生物保護条例に指定されている。販売品種の種子は比較的容易に発芽するようだが、野生種の発芽条件は不明であった。2022年の韓国の研究者チームの論文によると、最適発芽条件は15/10℃で8週間培養後4℃で12週間培養、その後種皮の一端を切除し25/15℃で培養することで、約70%程度が発芽したが、奇形が多かった。そこで群馬県の自生地で種子を採取し、100%EtOHで1分間洗浄後に約1週間流水洗浄した後に追試を行ったところ、約90%程度が発芽し奇形はなかった。種皮のコルク質部分に発芽・生長阻害物質が含まれると推察される。
栽培実験は販売品種の種子から作出した苗を用いて行った。相対生長速度(RGR、g g-1 day-1)は、9%区〜100%区で0.032〜0.058、3%区で0.005と、比較的広範囲の明るさの所で良く生長し、極端に暗い所ではほとんど生長しなかった。これは、本種が主に里地の水辺という、裸地的で明るい環境ではあるが、草丈の高い水生植物(ヨシなど)と競合しある程度被陰されることも多い環境下で生育していることと整合する。
ガラス温室を用いて外気温(25℃〜40℃)から平均で約2.4℃高めて栽培実験を行ったところ、RGRは2.4℃上昇区で有意に高くなった(p<0.01)。今後も進行する危険性の高い温暖化は、本種の生長にプラスに働く可能性があると思われる。