| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) I03-01  (Oral presentation)

土壌肥沃度勾配に沿った葉の寿命、窒素吸収、葉窒素の平均滞留時間の変化
Changes in leaf lifespan, nitrogen resorption, and mean residence time of leaf nitrogen along a soil fertility gradient

*及川真平(茨城大学)
*Shimpei OIKAWA(Ibaraki University)

植物が窒素を体内に保持する能力は、特に肥沃でない環境において、窒素利用効率、成長、適応度にとって重要である。葉群における窒素の平均滞留時間(MRTL)と、その2つの決定要因である葉寿命と窒素回収効率(rN、葉の老化中に再吸収される葉窒素プールの割合)は、肥沃度の低下とともに可塑的に増加すると仮定されてきたが、これはまだ完全には検証されていない。これらの特性が肥沃度の狭い範囲内でランダムに変化することが、検証を難しくしている。本研究では、肥沃度の広い範囲にわたってアラカシ稚樹のMRTL、葉寿命、rNを測定した。高~中程度の肥沃度では、施肥の減少とともに葉寿命とrNが増加し、MRTLが増加した。しかし、中~低程度の肥沃度では、施肥の減少とともに葉寿命は延びたが、rNは大幅に減少したため、MRTLは減少した。rNの減少は、老化葉の窒素濃度が下限に達しほぼ変化しないのに対し、緑葉の窒素濃度が減少し続けたために起こった。肥沃度勾配に沿ったMRTLrNの凸型応答から、肥沃度の変化に対するこれらの特性の応答について、少数の肥沃度レベルのみで実施する実験からは誤った結論が導かれる可能性があることが示唆される。そして、肥沃でない環境において、葉群内の窒素循環だけでは効率的な窒素利用を達成できないことが示唆される。


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