| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) I03-07  (Oral presentation)

京都市内における交通量の違いが街路樹の光合成及び気孔コンダクタンスに与える影響
Effects of different traffic volumes on the photosynthesis and stomatal conductance of roadside trees in Kyoto City

*内貴智仁, 半場祐子(京都工芸繊維大学)
*Tomohito NAIKI, Yuko HANBA(Kyoto Institute of Technology)

都市の街路樹は、景観に安らぎを与えるだけでなく、光合成による二酸化炭素の吸収、蒸散などによるヒートアイランド現象の抑制、大気汚染物質の吸収といった役割があり、都市環境の維持や改善に大きく貢献している。しかし、都市の街路樹は従来の自然環境とは異なるため、様々な環境ストレスを受けていると考えられ、それらの影響により、街路樹は光合成機能の低下などを引き起こす可能性がある。本研究では大気汚染に注目し、その指標となる自動車交通量の違いが光合成機能にどう影響するかを調べた。将来的に光合成機能の観点から大気汚染に強く、都市環境での生育に適した樹種を提案することを研究の目的とした。実験材料は京都市内で多く植栽されている低木のシャリンバイ(Rhaphiolepis  indica var. umbellata)と高木のトウカエデ(Acer buergerianum) を選んだ。調査地点は隣接する道路の交通量に差が見られた7か所を選び、5月~11月にかけて、各地点から葉を採取し、携帯型光合成蒸散測定装置Li-6400(Li-COR社)による光合成機能、Leaf Porometer(METER社)による気孔コンダクタンス(gs)、気孔密度、SPAD値、LMA、炭素安定同位体分別の測定を行った。光合成機能測定と採取地でのgsの測定の結果、シャリンバイは交通量の影響を受けにくいことがわかった。これにより、シャリンバイが大気汚染の影響を受けにくい樹種である可能性が示唆された。一方で光合成機能測定の結果、トウカエデはシャリンバイに比べて、大気汚染の影響を受けやすい傾向にあったが、光合成速度の低下はわずかであった。トウカエデでは、交通量の少ない地点では夏季から秋季にかけてLMAに有意な変化は見られなかったが、交通量の多い地点ではLMAが有意に増加した。これは大気汚染や乾燥といったストレスに対し、葉の器官を発達させることで、馴化している可能性がある。これらの結果から、両種とも都市環境に比較的適した樹種だと考えられる。


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