| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(口頭発表) I03-09 (Oral presentation)
植生フェノロジーとは植物が季節に伴って状態が変化することを指す。その時期は気温に大きく左右されることから気候変動によって大きな影響を受けていると言われており、この影響を広範囲で評価するにあたり、近年衛星リモートセンシングによるフェノロジー観測が進んでいる。しかしこれらの研究の多くは春の展葉時期や冬の落葉時期を求めるものであり、開花を観測する研究が出てきているものの、展葉・落葉以外の季節現象を衛星画像から観測した例は少ない。
本研究では茨城県つくば市にある筑波実験植物園内の樹木(ヤマボウシ・スギ)を対象とし展葉・落葉以外の季節現象を衛星画像から観測できるかを調査した。
ヤマボウシはミズキ科の落葉樹で、5月上旬から6月末にかけて総苞片を開く。総苞片は白い花のように見えるが厳密には葉が変化したものである。スギは常緑樹であるが、冬季に葉の色が赤く変化する現象が知られている。これは冬季の低温で光合成速度が低下した際、余剰となった太陽光による光阻害を防止するために赤色光の反射率を高めているためと言われている(Han and Mukai, 1999)。
本研究の対象地である筑波実験植物園はPhenological Eyes Network (PEN)の観測サイトの1つであり、2022年12月から定点観測カメラによる観測を行っている。
対象期間は2020年3月から2025年2月までとし、PlanetScope衛星画像から対象とした樹木の樹冠の植生指標(NDVI, GRVI)を計算した。また、定点観測カメラ画像から植生指標(GCC, RCC, GRVI)を算出し、衛星での観測を検証した。