| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) I03-12  (Oral presentation)

梢端定点撮影に基づくオイルパームの果実生産速度の制御要因推定
Estimation of the control factors for oil palm fruit production speed using treetop time-lapse photography

*羽田泰彬, 高村直也, 熊谷朝臣(東京大学)
*Yoshiaki HATA, Naoya TAKAMURA, Tomo'omi KUMAGAI(The University of Tokyo)

ボルネオ島では深刻な森林減少・劣化が進んでいる。大部分の天然林が1970 年代以降に人為的攪乱を経験し、より経済的価値の高いオイルパーム農園へと転換されつつある。この急速な土地利用転換によって局所的な炭素蓄積量が大きく変化することが懸念されているが、オイルパームは光合成で獲得した炭素の大部分を果実生産に投資するため、オイルパーム農園の炭素蓄積量を議論する際には果実生産速度やその制御要因に関する詳細な知見が必要になる。しかし、成熟したオイルパーム個体の樹高は10 mを超え、全長4 m程度の葉状体が梢端部から全方位に垂れ下がるため、梢端部で起こる雌花の出芽・開花および結実の過程を周囲から観察することは容易ではない。そのため、成熟個体の果実生産の様子を詳細に観察した事例は乏しく、果実生産の制御要因を推定する際の障壁となっている。そこで本研究では、ボルネオ島北部沿岸の鉱質土壌に造成されたオイルパーム農園を対象に、タイムラプスカメラを幹に直接固定する定点観測システムを開発し、観測プロット内3個体に導入した。さらに、プロット内に設置した建設用足場および微気象観測タワーに対してもタイムラプスカメラを導入し、計6個体の梢端部を1時間おきに撮影した。そして、得られた画像から果実生産に関わるイベント(雌花の出芽・開花、果実の成熟)を抽出し、各個体でイベントの起こった日付を記録した。合計2年9ヶ月に渡る定点撮影の結果、45回の出芽、32回の開花、23回の成熟のタイミングを撮影することに成功した。そして、イベント間隔の解析から、出芽イベントは季節によらずほぼ一定の時間間隔で発生することや、降雨量の多い月に出芽が起こると果実成熟までに要する期間が短くなる傾向にあることが明らかとなった。


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