| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) J01-05  (Oral presentation)

伊島産ニホンヒキガエルの大型化の要因について
Factors contributing to a gigantism of Bufo japonicus japonicus from Ishima Island.

*鈴川春樹, 木寺法子(岡山理科大学)
*Haruki SUZUKAWA, Noriko KIDERA(Okayama University of Science)

 両生類は性成熟まで急速に成長し,成熟後も緩やかに成長し続ける.したがって,個体群間でみられる体サイズ変異は,成熟前の成長率(初期成長率),成熟後の成長率(二次成長率),成熟齢,寿命といったそれぞれの成長要因,もしくはこれら複数の要因によってもたらされると推測される.ニホンヒキガエル Bufo japonicus は西日本に広く分布する大型の両生類で,地域で体サイズに差があることが知られる.特にメスは南方でより大型化する傾向にある.予備的調査により,この傾向に反して顕著な大型化が徳島県伊島の個体群で認められた.そこで,本研究では伊島産ニホンヒキガエルの大型化の要因を解明するため,骨年代測定法を用いて個体の齢査定を行い,個体群における年齢と体サイズとの関係について調べた.また,伊島の対岸に位置する四国本土(徳島県南東部;以下徳南)の個体群でも同様の調査を行い,個体群間で成長様式を比較した.各調査地でヒキガエルを捕獲し,体サイズの指標として頭胴長を計測した.また,齢査定のため右後脚第4指の指骨を採取した.採取した伊島産192個体,徳南産167個体の指骨の薄切切片を作成し,指骨断面の成長停止線を観察することで各個体の年齢を推定した.頭胴長を2個体群間で比較した結果,雌雄ともに平均値に10 mm以上の差がみられ,伊島個体群でより大きかった.また,二次成長にも異なる傾向が見られた.成熟後の3年間において,雌雄ともに伊島でより大きく成長しており,徳南個体群の約2倍の成長率を示した.一方,初期成長率に個体群間で差はなかった.また,成熟個体の最若齢と最高齢にも顕著な差はなかった.以上のことから,伊島産ニホンヒキガエルの大型化は,初期成長率や成熟齢,寿命の差によるものではなく,成熟後3年間の成長率の高さに起因すると示唆される.


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