| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(口頭発表) J02-13 (Oral presentation)
トカゲ類には,体温調節行動によって体温を維持する種と,環境温度と体温が同調する種が知られている.また,採餌行動では探索型と待ち伏せ型に区分される.これらの体温調節と採餌行動の関係について,待ち伏せ型2種,オキナワキノボリトカゲ(Dとする),グリーンアノール(C),探索型3種,オキナワトカゲ(P),アオカナヘビ(T),オキナワヒメトカゲ(A)を用いて検証した.また,出現時間帯に着目し,出現に影響を与える環境要因を明らかにすることで,温度生態について調べた.野外で体温と環境温度を測定した結果,全種で体温と基質温度に有意な正の相関が見られ,全種の回帰直線は体温と基質温度が完全に一致するy=x(y:体温,x:基質温度)の直線と,傾きに有意差がみられた.このことから,全種で何らかの体温調節を行っていることが示唆された.また,体温と基質温度の回帰直線において,傾きが0の場合に完全な体温調節を示し,傾きが1の場合に完全な温度順応性(体温が環境温度と同調する)を示すため,5種間の傾き(a)を比較した.その結果,全種で有意差が見られ,傾きが小さい順にP(a=0.18),T(a=0.59),C(a=0.69),A(a=0.72),D(a=0.94)であった.このことから,体温調節の違いは採餌行動だけでは明確には説明できないが,探索型は体温調節を精密に行い,待ち伏せ型は精密ではない傾向がみられた.このことから,探索型の種は,エネルギーを多く消費して体温調節を行うことで,高い活動性を維持する生活史であり,待ち伏せ型の種は体温調節の精度が低くなるが,エネルギー消費を抑えた生活史である可能性が考えられた.また,出現時間帯についてもD,P,Tは昼行性,Aは薄明薄暮性を示した.トカゲの出現には,種ごとに異なる環境条件から影響を受けており,これは各種の選好温度,採餌行動と密接に関係していることが示唆された.