| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) J03-20  (Oral presentation)

市街地に暮らす野生動物:カメラトラップ調査による京都市内とその近郊の比較
Wildlife in City Areas: Comparison of Urban and Suburban Areas in Kyoto City Using Camera Traps

*山本紘輝, 小山里奈(京都大学)
*Kouki YAMAMOTO, Lina KOYAMA(Kyoto Univ.)

近年、野生動物の個体数の増加や都市と自然生態系の接点となり緩衝地帯でもある地域(接続域)の減少が起こっており、人間と野生動物間の接点が増加している。この接点の増加は人間と野生動物間の軋轢の一因となっている。しかし、都市域で野生動物が利用し得る都市緑地や、接続域である近郊林における野生動物の活動の実態は特に日本国内では未解明な点が多い。そこで本研究では、カメラトラップ調査によって都市緑地および近郊林に生息する野生動物の活動の実態を明らかにすることを目的とした。都市域における調査例のない大都市である京都市で都市緑地と近郊林を対象に調査を行った。
2023年7月に京都市内の都市緑地(京都大学北白川試験地と同理学研究科植物園)と近郊林(同上賀茂試験地)に各5台ずつのカメラトラップを設置し、検出された種と日時を記録した。このデータを基に検出された野生動物の活動を分析した。都市緑地と近郊林で共通してハクビシンとホンドタヌキが検出され、都市緑地では、ホンドキツネ、アライグマなど計5種、近郊林ではニホンジカやイノシシなど計8種が検出された。また、Shannon多様度指数とSimpson多様度指数から、近郊林の方が多様度は高く、都市部では特定の種が優占する傾向が示された。希薄化曲線から、近郊林ではカメラトラップ調査開始から500カメラ・日まで、都市緑地では1250カメラ・日まで累積種数が一定の増加を示した。都市緑地では夜間に動物の検出数が多くなる傾向が顕著にみられ、近郊林では薄明薄暮の時間帯に動物の検出数が多くなる傾向がみられた。加えて、一般化加法モデルを用いて、野生動物の検出に対する気象条件、人間の検出などの経時的に変化する環境要因の影響について、それぞれが非線形的に影響を及ぼす可能性を考慮して、どのような条件下で検出数が多くなるかを検討する。


日本生態学会