| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-004 (Poster presentation)
ササ型林床の消失は土壌生物の多様性低下をもたらすことが知られているが、土壌動物群集の違い(ベータ多様性)がどのような影響を受けるのかについて詳しくわかっていない。環境条件や撹乱によるベータ多様性は、入れ子構造と入れ替わり構造に分けることができ、各種の変化が補償的でないときには入れ子構造が卓越し、群集の量的低下が生じていると捉えられる。地域間の群集の違いと、それが撹乱にもたらす影響を同時に評価するため、異なる地域で成立する土壌生物群集について、5年から24年の下層植生排除による撹乱を加えた実験区を用い、土壌動物群集の長期撹乱イベントへの反応の様式をベータ多様性の分割を用いて検証した。
本研究では、積雪条件や地質の異なる北海道内の4地点、天塩、中川、足寄、標茶のササ型林床を持つミズナラ林を調査地とした。それぞれの調査区で、対照区と下層植生の刈取り区を設定し、下層植生の刈取りを継続的に行った。それぞれの調査区の土壌から土壌動物を抽出した。トビムシ、ダニ各亜目など大分類での群集、トビムシの種レベルでの群集のプロットごとの群集距離を入替と入れ子成分に分割した後、それぞれの群集距離に対するサイトと処理の影響をPERMANOVAで解析した。
動物全体ではササ処理による個体数密度の有意な減少が観測された。トビムシ、ダニ各亜目など大分類での群集構造のベータ多様性は、サイト間では入替、下層処理で入れ子構造による違いが検出された。したがってサイト間の分類群構成は異なるが、下層処理に対しては共通して各分類群の個体数の縮小が生じるといえた。トビムシはサイト間、処理間とも入れ子構造となっており、生活型の機能的ベータ多様性も入れ子のみ検出され、表層性生活型が減少したため、表層性生物の減少がサイト間、処理間の群集変化の主要因と考えられた。