| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-008  (Poster presentation)

樹木に作用する風荷重の林内ギャップ生成による変化
Change in the wind load acting on trees with the size of forest gaps and distance from the gap

*宮下彩奈, 南光一樹, 鈴木覚(森林総研)
*Ayana MIYASHITA, Kazuki NANKO, Satoru SUZUKI(FFPRI)

樹木の風倒や伐採などによって森林内に生成するギャップは、光環境や水分環境の大きな変化をもたらすだけでなく、ギャップ周辺の樹木への風当たり(力学的ストレス)も変化させる。このような風当たりの変化は残存木の直径成長等のパターンに影響を与えることが知られているが、林内ギャップによる力学的ストレスの変化が実測された例はほとんどない。そこで、スギ幼齢林を利用して段階的な伐採を行い、残存木の地上部に作用する風荷重がどのように変化するのか計測した。
実験には森林総合研究所つくば構内に造成したスギ幼齢林(樹齢8年、平均樹高約6m、林分広さ東西40m×南北10m)を利用した。測定は2024年2月~4月にかけて実施し、この期間は西風が卓越するため測定木は東側半分に配置し、林内ギャップを中央付近から西側に樹高以上の大きさまで段階的に拡大していった。測定木18個体で風荷重の計測を行うとともに、林縁(林分西端の外)と林内(ギャップ東側最前列中央)の風速を記録した。風荷重の計測はひずみゲージを利用して行い、各樹木の風荷重および林内風速が林縁の風速に対してどのように増加するかを検討した。そのデータから、ギャップサイズやギャップからの距離、風向等の条件による林内木の風荷重の変化を明らかにした。
結果から、ギャップに対し正面からの風(西風)の場合、風荷重はギャップ最前列の測定木で最大2.1倍、後列のもので1.2倍に増加することが明らかになった。林内風速(ギャップ最前列)は最大1.46倍になり、風荷重が風速の2乗に比例することから整合性のあるデータが得られたといえる。また、最前列の個体で風向が20度傾いた場合には風荷重は最大約1.7倍、180度の場合は増加無しとの結果が得られた。このように、ギャップの出現による林内風況の変化を実測できたことは、野外における樹木の生育環境を理解するうえで重要な知見であるといえる。


日本生態学会