| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-011 (Poster presentation)
日本の高山植物の多くは、第四期更新世・氷期に周北極地域から日本に侵入し、間氷期に日本の高山に隔離されたものの残存種であるとされている。このような高山植物の1つにマメ科植物のOxytropis japonica(オヤマノエンドウ)がある。オヤマノエンドウはMesorhizobium属根粒菌と共生することで高山の厳しい環境に適応していると考えられており、現在北海道の大雪山や北アルプスの白馬岳、南アルプスの北岳など限られた高山帯に分布している。一般的にマメ科植物と根粒菌はある程度厳格な種特異性を有しており、その一部は根粒菌が持つ共生プラスミドや共生アイランドと呼ばれる共生遺伝子クラスターによって決定される。本研究で対象とする国内6山域のオヤマノエンドウの祖先は、約2万年前まで続いた最終氷期以降現在に至るまで共生根粒菌と共に各山域に隔離され共生系を維持してきたと考えられるため、山域ごとにオヤマノエンドウ-根粒菌共生系が共進化していることが推測される。本研究ではこの共進化を検出することを目的として、根粒菌共生プラスミドの遺伝子構造比較と接種実験を行った。6山域の根粒菌の共生プラスミドについてシンテニー解析を行ったところ、一部の遺伝子クラスターにおいて山域間で遺伝子構造の違いが見られ共生系の共進化が生じている可能性が考えられたため、接種実験を行い根粒の有無・個数やシュート長などを測定した。異なる山域のオヤマノエンドウと根粒菌の組み合わせで接種実験を行ったところ、いくつかの山域で共生系の共進化が生じていることが示唆された。