| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-013  (Poster presentation)

西表島に生育するヒルギ科マングローブ植物6種の葉の生理的・形態的季節変化
Seasonal changes in leaf physiological and morphological traits of six Rhizophoraceae mangroves on Iriomote island

*赤路康朗(国立環境研究所), 井上智美(国立環境研究所), 馬場繁幸(ISME)
*Yasuaki AKAJI,(NIES), Tomomi INOUE(NIES), Shigeyuki BABA(ISME)

マングローブは熱帯域を中心として北緯31°と南緯38°の間に分布する.我が国に生育するマングローブ植物は分布の北限域に位置しており,冬季は15℃以下の低温に,夏季は35℃に迫る高温に晒される.このような気温変動下に生育するマングローブ植物の葉の生理的・形態的な季節変化を理解することは今後の環境変動がマングローブの成長や分布に及ぼす影響を予測する上で重要である.そこで本研究では,沖縄県西表島に自生並びに試験的に植栽されたヒルギ科マングローブ植物6種(Rhizophora属3種・Bruguiera属2種・Ceripos属1種)を対象として,3ヶ月ごとに林冠の葉を採取し,形態,光合成機能,および各元素濃度を定量し,これらの種間差と季節変化を明らかにすることを目的とした.面積あたりの葉の乾燥重量はRhizophora属で高くBruguiera属で低い傾向があり,全ての種で5月にピークがみられた.光合成機能の一つの指標である最大量子収率(Fv/Fm)も全ての種で5月に最も値が高かった.Fv/Fmは気温が低い2月に全ての種で最も値が低く,Rhizophora mucronataCeriops tagalにおいては気温が高い8月もFv/Fmが顕著に低下していた.葉の元素組成は種間および季節間で有意に異なっていることが示された(P < 0.05, PERMANOVA).主成分分析により,Rhizophora属はナトリウム・カリウム・マンガン,Bruguiera属は炭素・鉄,Ceriops属はマグネシウム・硫黄・ホウ素の濃度が比較的高い傾向がみられた.また,ケイ素・カルシウム・マグネシウムの濃度は全ての種で2月と5月に高くなる傾向がみられた.以上の結果から,ヒルギ科マングローブ植物の葉の形質は形態と元素組成の両方によって特徴づけられ,その季節変化は供試樹種間で類似していることが示された.


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