| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-014  (Poster presentation)

遮光条件がつる性植物の光合成機能に及ぼす影響【A】
Effect of shading conditions on photosynthetic function of vines.【A】

*坂間秀剛, 半場祐子(京都工芸繊維大学)
*Hidetake SAKAMA, Yuko HANBA(Kyoto Institute of Technology)

地球温暖化対策としての緑化には、気温上昇の抑制やCO2の吸収・固定効果に加え、生理的効果など多くの利点がある。しかし、都市部では十分な緑化スペースが確保しにくいため、壁面緑化が有効な手段となる。京都市では壁面緑化のために花と香りを持つつる植物が多用され、景観にも配慮されている。しかし、壁面緑化植物は新たな建築物の影響で光条件が変化しやすい。光条件の変化は、植物に影響を与える可能性が高い。例えば強い日陰は、夏の熱波で発生する高い外気温度に対する葉の耐性を低下させる可能性がある。したがって、光条件の変化にどのように適応できるかを明らかにすることが、つる植物の緑化植物としての適性をみる上で重要である。本研究では、我が国の壁面緑化で用いられるつる植物を対象に、弱、中程度の遮光処理を行い、光合成機能、クロロフィル蛍光測定などを解析し、光条件や季節変化への応答を評価することを目的とした。京都工芸繊維大学の圃場で栽培したハゴロモジャスミン(Jasminum polyanthum Franch.)およびカロライナジャスミン(Gelsemium sempervirens(L.)W.T.Aiton)を対象とし、対照区、28.5%遮光区、50%遮光区に区分した。遮光処理は8ヶ月間実施し、その後1ヶ月の回復処理を行った。その結果、光合成機能の大部分は遮光処理よりも季節変化の影響を受けた。一方、クロロフィル蛍光測定では、光合成系IIの最大量子収率が遮光により増加し、光ストレスの低減が示唆された。両種とも季節変化の影響を受けたことから、季節変化による高温・低温ストレスや耐寒性の有無が光合成機能に影響を与えたと考えられる。また、クロロフィル蛍光パラメータの変化から、遮光により光ストレスが軽減され、光合成系の損傷が抑制されたと推測される。


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