| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-015 (Poster presentation)
アラカシ(Quercus glauca)は暖温帯に分布する、一斉展葉型の常緑広葉樹である。野外では、冬季は展葉が止まり、芽の状態で待機し、春に展葉する。アラカシ実生を種子から、環境制御下(明期12時間、暗期12時間、気温2段階、常温:22℃設定、低温8℃設定)で栽培したところ、気温や日長の季節変化がない条件で、展葉、芽の形成と展葉の停止、新たな展葉及び落葉が見られた。落葉が光合成能力(ソースの能力)の低下により引き起こされるのか、新葉の展開(シンクの増加)により引き起こされるのかを検討するために、このような実生の葉の光合成能力(二酸化炭素濃度400ppm、常温生育個体、低温生育個体ともに温度22℃設定での光・光合成曲線)を調べた。葉によるばらつきはあるものの、低温生育個体では常温生育個体よりも、光合成能力がほぼゼロになるまでの期間や1枚の着葉期間が長くなった。栄養液は、ほぼ一か月おきに与えたが、常温生育個体では栄養液を与えてから数日後に展葉が始まり、落葉が促された。低温生育個体では、栄養液を与えても展葉は抑えられた。落葉の窒素濃度は、展開中の葉よりも低いが、完全展開をした着葉より若干低めである程度だった。葉の展開が抑えられている低温生育個体では常温生育個体よりも落葉の窒素濃度が高いのではと予想したが、ほぼ同程度の窒素濃度であった。吸収された無機栄養は芽に向かい、それがきっかけになり芽が展葉し(シンクの増加)、関わっているメカニズムは不明であるが、なんらかのシグナルを使って、光合成能力(ソース能力)が低下した葉の落葉が促されるのではないかと考えられる。