| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-017 (Poster presentation)
本研究では、C4植物の窒素利用戦略と窒素欠乏ストレスへの適応メカニズムの解明に貢献することを目的に、C3植物とC4植物の窒素欠乏ストレスに対する光合成応答の比較・解析を行なった。C3種(Fraveria pringlei)とC4種(Fraveria bidentis)の両方を有するフラベリア属植物およびトウモロコシ(Zea mays L.)を用い、窒素欠乏処理を行い、その後窒素回復処理を行なった。各処理地点で光合成速度(A400)、気孔コンダクタンス(gs)、光合成窒素利用効率(PNUE)等の光合成パラメータの測定と葉の内部構造観察を行なった。その結果、C4種のフラベリア(F.bidentis)では窒素欠乏期間中は光合成能力が維持され、回復期に光合成能力が向上する傾向があることがわかった。また、トウモロコシに関しても、窒素欠乏期間中に光合成能力が維持された。これは、窒素欠乏に対しC4植物が生理的適応のメカニズムを働かせ、回復期に光合成に関与する酵素やタンパク質をアップレギュレートさせている可能性を示唆している。またC4種のフラベリア(F.bidentis)では、窒素欠乏によって葉肉細胞のサイズに変化があったが、トウモロコシに関しては葉肉細胞のサイズに変化がなかった。このことはC4植物内、同じ光合成サブタイプ内でも窒素欠乏に対する形態学的な応答が異なる可能性を示唆している。今後は、光合成関連のタンパク質であるPEPCやRubiscoの機能抑制株を使用して検証を行うことや、さらに長期間の窒素欠乏期間を設けて検証を行うことで、C4植物の窒素応答のメカニズムの理解を深める必要がある。