| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-022  (Poster presentation)

都市内の古墳、神社、公園におけるアリの種多様性の比較
Comparison of ant species diversity among ancient tombs, shrines, and parks in urban areas

*今西亜友美(近畿大学), 今西純一(京都大学)
*Ayumi IMANISHI(Kindai Univ.), Junichi IMANISHI(Kyoto Univ.)

 都市の緑地は、都市の生物多様性保全に重要な役割を果たしている。しかし、都市で新たに大規模な緑地を創出することは難しい。そのため、都市で生物多様性を保全するには、既存の緑地を適切に管理することが不可欠である。日本の都市内には、神社仏閣や古墳に付随する、長期的に保護されてきた文化的・精神的価値を持つ緑地が点在している。これらの緑地は、造成された都市公園よりも都市の生物多様性の保全に大きく寄与している可能性がある。本研究では、古墳・神社・都市公園におけるアリ相を比較し、それぞれのアリ相の特徴および環境要因との関係を明らかにするとともに、都市におけるアリ類の多様性を維持するための緑地管理について検討した。
 大阪府藤井寺市および羽曳野市内にある古墳、神社、都市公園のそれぞれ8か所を調査対象とした。調査地において、2023年および2024年の7月から10月にかけて、単位時間調査およびベイトトラップ調査を実施し、生息するアリ類を記録した。また、各調査地における樹冠、草本、落葉の被覆率および微生息場所の数を記録した。
 調査の結果、古墳、神社、都市公園における平均種数はそれぞれ14.3種、14.3種、11.4種であり、3つの緑地タイプ間で有意な差は認められなかった。緑地タイプ間のアリ類の種構成の異質性は、神社と都市公園の間で高かった。一方、古墳は両者との種構成の違いが比較的小さかった。神社と都市公園における種構成の違いは植生構造の違いに起因し、具体的には、神社では樹冠および落葉の被覆率が高く、都市公園では草本の被覆率が高かった。一方、古墳では過去の履歴や現在の整備状況が、各古墳の種構成に大きな影響を与えていた。古墳の整備の主目的は文化財の保護であるが、今後は都市の生態系の一部として、副次的に生物多様性の保全も可能となる整備のあり方を検討することが望ましい。


日本生態学会