| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-024 (Poster presentation)
海岸砂丘は乾燥、強風などの厳しい環境条件が作用する生態系であり、そこに生育する植物は環境に適応した形質を進化させている。先行研究においては、海面からの距離に沿った植物群落の構造や形質に選択的な影響を与えていることが明らかになっているが、種内・種間における詳細な形質の見解には研究の余地がある。
調査地である鳥取砂丘は広範な砂丘地形と多様な植生帯を有するため海岸砂丘植物の適応戦略を調査する上で最適な調査地である。また、海面と陸地の境界線(汀線)に近い移動砂丘から内陸の安定した草原へと植生が変化し、それに伴って土壌の水分保持能力や砂の移動が変化している。このような環境勾配が明瞭であるため、植物の葉や根の形質がどのように適応しているかを詳細に分析することができる。さらに砂丘の植生遷移が進行し、景観や生態系に変化が生じているため、植物の適応戦略の解明は自然環境の生態系維持に重要な知見を提供する。
本研究では、「汀線近くに生息する植物は人生が高いなど風や乾燥に耐性のある形質を持つこと」、「内陸側ではストレス要因が減少し、植物高が高まるなど形質が異なる傾向があること」を仮説に、種内及び種間の形質の変異を調べることで、海浜環境においてどのような適応戦略が成功するのかを明らかにすることを目的とした。
2024年9月に鳥取砂丘西側において植物種と各種のコドラートにおける被覆割合を調べ、葉・根の面積、鮮/乾重量、厚さ、靭性を測定した。海側から陸側にかけて120~140mのトランセクトを三本と10m間隔のサブトランセクトを用意し、左右に一つずつコドラートを作った。植生調査の結果17種が出現し、コウボウムギやケカモノハシが優占することが明らかになった。海岸線からの距離によるストレス勾配と植物高・厚さ・靭性には関連がある傾向が見られたため、今後詳細に解析する必要がある。