| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-028 (Poster presentation)
伊豆諸島は島ごとに独自の生態系を形成しているとともに、多数の希少鳥類が生息している。しかし、長期的な調査は、渡航や滞在に多大な労力を要するため実施が難しく、島によっては継続的なモニタリングが実施されていないことが課題となっている。近年、アクセスの悪い地域でも鳥類の生息状況を把握できる手法として、受動音響モニタリング(PAM)が注目されている。本研究は、伊豆諸島北部(神津島以北)と南部(三宅島以南)でアカコッコやイイジマムシクイなどの生息状況が異なることに着目し、音声調査によって神津島と三宅島における生息状況の差異を定量的に比較することを目的にした。
調査は2024年5月にスダジイ林へ自動録音機を三宅島に1ヶ所、神津島に4か所設置し、毎時5分間の録音を行った。神津島と三宅島の日ごとの総検出種数、夏鳥の日ごとの検出数の変化、ならびに繁殖固有種であるアカコッコおよびイイジマムシクイの日ごとの検出数を比較した。
両島での1日あたりの総検出種数においては、三宅島の方が神津島よりも1日あたり種数が多かった。次に、アカコッコおよびイイジマムシクイにおいて、三宅島の検出数は神津島より多かった。また、神津島はアカコッコの音声は検出されなかった。アオバズクなどの夏鳥については多くの種が調査期間中すでに飛来していた一方、ホトトギスは両島でほぼ同時期に検出され、渡り到着のタイミングの一致が示唆された。また、イイジマムシクイは神津島で5月末に少数が検出された。これは渡り途中の個体などの可能性があるが、本種がどのように神津島を利用しているか明らかにすることは、繁殖期前からの比較が必要と考えられる。