| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-030 (Poster presentation)
草原・湿原生態系における環境評価および生物多様性評価の新規手法を確立するため、本研究では日本の代表的な草原景観を有する阿蘇くじゅう国立公園くじゅう地区において、異なる立地条件の地区における群落の組成と構造、また種多様性と立地環境条件や管理との関係を明らかにすることを目的とした。また、本研究は草原生態系の基盤となる群落の生物多様性や環境評価を簡易に行うための新規評価手法を開発することを目指しているが、そのためには基礎的データの収集が必要であり、失われていく草原・湿原の自然再生や保全に寄与することを最終目的とした。
2020年~2023年に2地区(K・Y)の計19地点101プロットで群落調査等を実施し、群落特性や多様性が高い群落型の成立要因について議論した(大窪ほか 2021、2022a、2023a、Okubo 2022b、Okubo et al. 2023b、大窪 2024)。本研究では2024年に新規3地点等の21プロットを追加し、計122プロットで実施された植生および立地環境調査のデータを使用し、解析が行われた。
半自然草原群落および湿生草原の湿原群落で出現種数が25種(4㎡当たり)以上のプロットや群落型は種多様性が高いと考えられ、輪地切とよばれる防火帯とするための管理上の刈り取りが実施されている場所が多かった。湿原群落ではヌマガヤやトダシバ、エゾアブラガヤ、ゴウソ、ヤマアゼスゲ、ヨシが優占する群落型で、絶滅危惧種のヒゴシオン(国VU)、ツクシフウロ(VU)、シムラニンジン(VU)、マアザミやミヤコアザミの個体群が維持されていた。半自然草原群落で種多様性が高い群落型はトダシバやチガヤ、オカルガヤが優占し、オミナエシやカワラケツメイ、クララ、レンリソウの他、湿性種であるウメバチソウやミヤコアザミ、ゴマノハグサ(VU)が出現し、後者の湿生種群は種多様性の指標である考えられた。